すべてをブラウザのみで実行する時代の到来
ウェブAPIに対してソフトを書く時代になり、ほとんどのことがウェブブラウザで行なえるようになってくれば、当然「ブラウザさえあれば下位にある旧来のOSは不要」、あるいは「無駄をそぎ落とし、ブラウザ実行に特化したOSがあってもいい」という議論が持ち上がる。Google Chrome OSの登場は、それを端的に物語っている。
実は「ブラウザがあれば、OSは要らない。ブラウザがOSのような存在になる」というのは、新しく出てきたヴィジョンではない。もう15年ほども前、インターネットの寵児となったNetscape社のマーク・アンドリーセンが、このヴィジョンを語っている。これはWindowsでパソコン市場を支配し大儲けしたMSにとっては恐怖であり、絶対に実現させてはならないヴィジョンだった。
そこでMSはなりふり構わぬNetscape潰しに奔走し、企業としてのNetscapeは姿を消した。だが、MSも市場独占力を乱用したと独占禁止法違反に問われ、独禁法違反を認定され、政府の監視下に置かれることになった。アメリカのみならず、EUでもMSに対する独禁法違反の監視が厳しい。MSは、マーク・アンドリーセンのヴィジョンの実現に挑戦するGoogleを脅威に感じていることは確実だが、今度ばかりはおいそれとは手は出せまい。なりふり構わぬGoogle潰しができないことは、Googleに有利な点である。
なお、MSが潰したはずのNetscapeのブラウザやメールソフトは、その後、誰でも自由に改良や配布が行えるオープンソースと呼ばれるソフトになった。それが、Mozillaに姿を変え、いまブラウザはFirefox、メールソフトはThunderBbirdというソフトに発展し、多くのユーザーを掴んだ。いまやFirefoxはブラウザ市場で着実にシェアを伸ばしているのだから、世の中、先がどうなるかわからないものである。冒頭で述べたように、我々の業界は予測が難しく、予想の多くは外れるのである。